奥の居る家に帰りたくないんだって
俊が寮を解約、立ち会いの後にそのまま私の家に来た。
俊「奥には嘘ついてるんだ。出来るだけ埼玉へ戻るのを遅らせようと思って。でももうそろそろ嘘も限界。戻らなきゃ。」
私「どうして戻りたくないの?」
俊「実際ね、雪子との関係がバレてから、嫁とは話し合いって言う話し合いもそれほどしてないんだ。」
私「まぁ、不倫をやめる気なくて水面下で継続中なんだから、話しずらいよね。多分クロだってバレてると思うけどね」
俊「なんかさ、精神状態が悪化してってるんだよね。急に半狂乱になってわめき散らしたりさ。心療内科に通ってるんだけど。」
私「そりゃそうでしょ。女の存在に気付かないわけないよ。現に『まだ会ってるでしょ』って言ってきてるんでしょ?」
俊「そうなんだよ。状態を良くするために何とか嘘ついて安心させようとしてるんだけどさ。」
私「奥が半狂乱になって暴れたとき、俊はどうしてるの?」
俊「悲しい目をして見てる。」
私「見てるだけ?抱き締めてあげないの?」
俊「しないね。もう、気持ちが無いんだよ。嫁には。」
私「ふうん、でもこんなのさ、奥、不幸だよね。俊も不幸、私も不幸。奥のこと全面的に愛してくれる人もこの先いるでしょうに。気持ちが無いなら解放してあげればいいのに。気持ちが無いのに、それでも他の男には取られたくないんじゃない?男ってそういうとこあるよね。」
俊「うーんどうかな。いっそ何もかも捨てて雪子の所に来たらどんなに良いだろうって思うよ。」
私「来たらいいのに。世帯年収二千万円の生活ができるよね。俊が起業して独立するのを躊躇するのも、失敗を恐れるからでしょ?というか、その状況じゃ失敗出来ないもんね。自活出来ない、しかもうつ病の奥に依存されてぶら下がられて
ちゃさ。」
俊「うん。雪子と一緒なら、じっくり余裕を持って仕事出来るんだけど。」
私「そうよ。チャレンジに失敗なんてつきもの。怖がってちゃ何も出来ないわよ。うちはいつきてもいいわよ。3人くらい余裕で養えるから。」
俊「でも、俺の性格上、だからといってポイッと見捨てる事も出来ないんだよね。」
私「そんなのあなたの独りよがりの自己満足よ。まぁ、今見捨てられないとかそんなカッコイイこと言ってたって、三ヶ月も持たないうちに奥との生活にウンザリして限界を迎えると思うわ。これから奥の元に帰って、現実を味わえばいい。」
俊「ああ…。帰りたくない。ツラいこと嫌なことだらけだ。俺がこれから新しい仕事を頑張らなきゃって前向きになるのも、嫁は面白くないみたいなんだよね。」
私「なんで?経済的に依存してるんだから奥は俊を応援しなきゃじゃないの?」
俊「自分はこんなに苦しんでるのにって。」
私「ほんとバカな嫁ね。自分のことばっかり。」
俊「楽しみにしてた退職金が無くなったとか責められ通しだよ。」
私「人の金あてにすんなって。てめえで働けって。自分が退職金もってこいって。俊が気持ちよく仕事するための協力すらしないくせに。家事もろくにしないんでしょ。」
俊「あまり得意ではないね。」
この三日間、私の家で俊は思うままに寛いでた。お腹減ったといえば、温かく美味しい料理をふるまうと喜んでた。
俊「毎日カップラーメンか、ごはんにフリカケだったから。身に染みるよ。」
お楽しみなのはこれから。